国民の消費生活に関連する問題の調査や相談、クレーム処理などを行う独立行政法人「国民生活センター」には、全国から多数の自動車売却に関するトラブルが報告されている。

以前から自動車の売却に関する相談は一定数寄せられていたが、大きな変化があったのが2011年の東日本大震災以降だ。

被災地の東北を中心に自動車や自動車部品の生産拠点が大きな被害を受けたため、新車の生産にも大きな影響が出たことは記憶に新しい。

新車の供給が不足したことで中古車への需要が高まり、それと同時に自動車の売却に関する相談件数が増加したのである。

中古車買取業者による強引な勧誘や買取、売買契約に伴う解約トラブルは後を絶たず、なかには水没車の取り扱いや自動車の放射能汚染など直接震災の影響を感じさせるトラブルも報告されている。

また最近では、インターネットの車一括査定サービスの利用者から、多数の勧誘に困っているなどの相談が寄せられることもある。

そこで、増加する自動車の売却トラブルについて、トラブル事例をもとにその対処法と売却時の注意点について見ていこう。

相談件数の推移と背景

増加中

2001年以降の傾向として言えることは、消費者はなるべく同じ車を長く乗ることを好むということである。社団法人日本自動車工業会の調査でも、以前保有していた車の保有期間も、現在保有している車の保有期間もともに長期化していることが明らかになっている。

つまり、今の消費者は、できるだけ長く同じ車を大切に乗り続けたいと考える人が多いということだが、そんな消極的な傾向に大きな影響を与える出来事が近年あった。

一つはエコカー減税やエコカー補助金などの政策だ。新車の登録台数を見てもその影響は明らかで、それに伴いそれまで乗っていた車を売却する人も増えたのである。もう一つの出来事は東日本大震災だ。

社団法人日本自動車販売協会連合会(自販連)の統計によると、震災の前年と比べ、震災直後の新車登録台数が大きく減少したという。(参照:社団法人日本自動車販売協会連合会「統計データ」)

震災から数年経った今では震災直後と比べれば全国的に新車登録台数も増えてはいるのだが、それでもいまだに東北地方では新車登録台数が低迷を続けており、新車の供給不足の影響により、中古車業者による強引な買取や勧誘といったトラブルも増加したと考えることができる。

実際に寄せられているトラブル事例一覧

相談する女性

国民生活センターや全国の消費生活センターに寄せられる、車売却に関するトラブルの相談内容には以下のようなものが多い。(参照:国民生活センター「増加する自動車の売却トラブル」)

売買契約を解約できない、法外な解約料を請求された、契約書の記載より高額な解約料を請求された、査定額より解約料の方が高い、虚偽の説明で無理やり契約させられた、契約書を交わす前に車を持って行かれた、入金前に買取業者が倒産した、引き渡し後に一方的に減額された、などなど枚挙にいとまがない。

トラブル事例からわかることは、消費者は売却を渋っているにもかかわらず、中古車買取業者は何しても車を手に入れようとすることでトラブルに発展することが多いということだ。では、具体的な事例を詳しく見ていこう。

契約当日、引渡しもしていなのに解約できない

国民生活センターに実際に寄せられた例を見てみよう。相談者は、インターネットの車一括査定サイトを見て無料で車の価値がわかると知り、個人情報と自家用車の情報を入力したという。

すると、直後から多くの車買取業者から営業の電話がかかってきたそうだ。興味を持った相談者がそのうちの一つの業者に出張査定を依頼したところ、業者は査定したうえで「65万円で売ってくれ」と言ってきた。

金額に納得できなかったが、あまりにしつこいので「70万円なら売却してもよい」と言うと、業者はそれで構わないと契約書を交わすことになった。しかし、契約書にサインした後で家族に連絡したところ、家族は売却に反対だという。

そこで、相談者は業者にキャンセルの連絡を入れたのだが、すでに買い手が見つかったということでキャンセルを拒否されたのだという。

契約書には「契約締結後のキャンセルは不可」とあるが、引渡しもしていないのに解約できないのはおかしいということで寄せられた相談である。

ほとんどの業者はこのように契約書にキャンセル条項を規定している。契約前によく確認しなかったことで発生したトラブルである。

高額な解約料は妥当なのか?

国民生活センターによると、車売却における高額な解約料のトラブルの例には次のようなものがある。息子が金に困り、買い与えていた車を買取業者に売却しようとしていたところを見つけた相談者は、売却には反対だったので業者に解約を申し出たという。

ところが、業者の言い分は「すでに他県の営業所に搬送した後なので解約不可」というものだった。それでも、息子が持っている車検証はコピーであり本物は自分が持っていることを楯に、強固に解約を主張して交渉したところ、「誓約書に署名して10万円の解約料を支払うならキャンセルできる」というものだった。

仕方なく指定の金額を支払い、誓約書にも署名したが、まだ買取金額も受け取っていなければ車検証も渡していないのに、キャンセルするのに10万円もの高額な解約料がかかるのは妥当なのかという疑問だ。

すでに車が搬送されているなら、搬送費用に当たる分は手数料としてかかるのは仕方ない。そのうえ、解約条項として契約書に規定していると業者に主張されれば、たとえ高額な金額でもこちらの落ち度として泣き寝入りしてしまう人もいる。しかし、あまりに法外な金額では納得いかないのは当然である。

契約書に記載された以上の解約料を請求された

これについては、相談者がアメリカ製の車を100万円で買取業者に売却することにしたという例がある。

いったんは売却額に同意し、業者と契約書を交わしたものの、その後でやはりキャンセルしたくなり、車を引き渡した3日後に業者に解約を申し出たそうだ。契約書には「客都合の解約は解約料として10万円かかる」とあったので、10万円を支払うことには納得していた相談者だが、業者が言うには「すでにオークションで落札されたため、その落札者に対する迷惑料などが必要なので、さらに20万円必要」ということだった。

契約書には10万円と明記されているのに、それ以上の金額を請求されるのは納得いかないという相談者だが、これも難しい問題である。

そもそも中古車の買取はクーリングオフ制度の対象外であるため、基本的には解約できない。それでも解約したいのであれば解約料が発生するのは当然だ。その旨をほとんどの買取業者は契約書に盛り込んでいるだろう。

しかし、契約書の記載以上の金額を請求するのは業者に問題がある。なので、裁判を起こせば勝算はあるだろう。ただし、訴訟には膨大なお金と時間がかかるものだ。

解約料が売却代金より高い

60代の男性から寄せられたトラブル事例を見てみよう。相談者は中古車買取店にて愛車の無料査定を受けた。ところが、価値がないので買い取れないと言う。

車検登録したばかりでタイヤも2本を新品に交換したことも説明したうえでの結果だ。そこで、相談者はあきらめて帰ろうとしたのだが、「価値はないが5万円なら買い取ってもいい」との買取店の言葉で売却することを決めた。

しかし、契約後、数日経って、やはり買取金額に納得がいかないため解約したいと申し出ると、「違約金として買取金額100万円以下の場合は一律10万円の解約料が生じる」と言われたそうだ。

契約書をよく見ると確かにその記載があったのだが、契約時に口頭による説明はなかった。買取金額が5万円にもかかわらず、10万円もの解約料を支払うことに納得できないというわけだ。

買い手がすでに決まり手続きが進行しているのであれば、無料で解約できる可能性は低いだろう。ただ、このケースでは、一律10万円の解約料が有効なのかがポイントである。

買取業者のなかにはこのように解約料として一律の金額を定めるところもあるが、それに納得できない売却者との間でトラブルに発展するケースが増えている。

クーリングオフできるからとの虚偽の説明で契約を強要

40代の女性からの相談事例だ。相談者の父親が高齢のため車の売却を検討していた時のことだ。買取業者に出張査定に来てもらったのだが、父親が不在のため娘である相談者が対応することになった。

査定後、業者から買取金額を提示され売却を勧められたのだが、相談者は「車の所有者の父親が不在なので自分では決められない」といったん引き取ってもらおうとした。

しかし、業者はクーリングオフできるからと契約書を見せて、強引に売買契約を結ばされてしまったという。その際、車検証や自賠責保険証なども車と一緒に持って行かれたそうだ。

ところが、その後じっくり契約書に目を通すと、「入庫後のクーリングオフは不可」と記載されていた。あわてて業者に連絡して「車を引き渡した後ではクーリングオフができないことを説明されていない」と訴えたのだが、業者は「まるでうちが騙したみたいじゃないか」と激高、さらに「もう遅い。早く税金や保険料の還付の代理請求の委任状を出せ」などと一方的に言われたという。

虚偽の説明は立派な違法行為だが、このような本人以外の代理者が契約してしまったことでトラブルに発展するケースは増えているので注意が必要だ。

売却契約をしていないのに車をもっていかれる

次は、20代の女性から受けたトラブル相談だ。相談者がある買取業者に出張査定を依頼したところ、査定の結果、金額は付かないと言われたそうだ。

ところが、「修理すれば価格が付くかもしれない」と修理工場に持って行って調べると言われ、契約もしないまま車を持って行かれたという。相談者は金額次第では売ってもよいと思っていたのだが、後日、業者から「10万円で売れました」と言われ、その時点ですでに契約書まで用意されていた。

「まだ売るとは決めていない」「親に相談して決める」などと訴えても業者は聞く耳を持たず、すでに買い手が付いているので早くサインしてくれと契約を迫り続けたそうだ。

結果、対応に疲れた相談者は仕方なく契約書にサインしたそうで、翌日、知人を同伴しもう一度話し合いを求めたものの、車の在り処さえ教えてくれなかったという。

正式に契約していないばかりか、本人の同意がないのに勝手に売却するとは、詐欺と言ってよい事例だが、事実、このように本人の承諾なく車を持って行かれたという報告は少なからず寄せられている。

また、このケースでは、相談者が若い女性ということで、業者に軽く見られた可能性もある。

入金が完了していないのに買取会社が倒産

車売却のトラブルにおいては解約を巡るものが多いが、なかには車を引き渡した後に業者が倒産したために代金を回収できないというケースも報告されている。

国民生活センターの相談事例によると、「ネットの一括査定サイトで知った業者と300万円の買取金額で売却する旨の契約を結んだが、期日になっても代金が振り込まれないので直接会社まで行ってみると倒産していた」というものだ。

会社の倒産は中古車業界に限らずあらゆる業種であり得ることであり、買取業者としても最初から詐欺を働こうと思っていたとは限らない。

しかし、代金を受け取る前に車を引き渡すと、このように代金を回収することが不可能になるケースもある。また、特にこのケースでは、買取金額が300万円と高額のため、最初から車を奪うための計画倒産だった可能性もある。

一括査定サイトで売るのであれば、一社だけ異常に高い査定額を提示する業者には注意が必要だ。

いずれにせよ、倒産による代金の回収の失敗を防ぐには、代金の受け取りと車両や書類の引き渡しは同時に行うことだ。先に車だけ渡さないことにくれぐれも注意したい。

事故車と言われ、引き渡し後に減額

売却金額で合意に達して契約したにもかかわらず、後日、理由を付けて減額されるというトラブルも多い。

国民生活センターに寄せられた事例によると、「22万円という査定額だったのでその場で契約して車を引き渡したが、数日後に業者から連絡があり、オークション会場での点検で事故車と判明したために当初の半額での買取になると一方的に告げられた。解約は可能だが解約料として3万円を請求するとも言われた」という例がある。

中古車業者の利用するオークションでは会場で査定士による再チェックが行われるため、確かに、最初の査定で見つからなかった瑕疵が見つかることはある。

また、それに備え、「契約後に修復歴が判明した場合は査定額から減額できる」と契約条項に定める業者も多い。民法では瑕疵担保責任が定められているので、業者はそれを元にこのような権利を主張しているのであろう。

しかし、車売却ではプロの査定士による査定によって金額が決定されるため、最初の段階で不具合を見つけられなくても、それは業者側の過失であり売却者の責任ではないはずだ。

震災関連のトラブル

相談する女性2人

冒頭にも記したように、2011年に発生した東日本大震災の影響で、東北地方に拠点を持つ多くの自動車関連工場が被害を受けた。

それゆえ、東北地方を中心に新車の供給が減少している。供給の不足とはすなわち需要の拡大であり、「新車が手に入らないなら中古車を」という消費者の心理につけ込んで、強引に買取を行おうとする中古車買取業者まで現れた。

その手口は震災を口実に車を安く買い取ろうというものであり、人の不幸に乗じて不正を働く詐欺業者と言ってよい。

放射能汚染や被災地のことなど、デリケートな問題を楯に己だけ利益を得ようとする業者の弁舌には十分に注意してもらいたい。以下で、震災関連の車売却におけるトラブル事例を見ていこう。

放射線の値が瑕疵にあたると言われた

数は多くないが、放射能汚染を理由に車の買取契約の取り消しや査定金額の減額を業者に一方的に告げられる事例も報告されている。

国民生活センターに寄せられた相談には、福島県で震災から間もないころに車を売却した男性が、売却から1週間も経って放射線量が高いため買取契約の取り消しを業者に求められた例がある。

放射線量が瑕疵に当たるため一方的な契約の取り消しは有効だという業者の言い分だが、放射線量が本当だとすると気になる話だ。

確かに被災地の車から基準値より高い放射線量が計測された事実はあるうえ、そのような中古車を海外に輸出することはできないので、中古車買取業者も買取に慎重になっている面はあるだろう。

ただし、この相談のケースでは最初の査定の時点で業者がしっかり放射線まで測定するべきだったと考えられる。そのうえで、それを瑕疵として反映させた査定額を提示するか、買取を拒否するかの選択をすべきだったろう。

契約後の申し出は消費者契約法的にも認める必要はないのだが、この場合も、売却代金を受け取る前に車両や書類を渡してしまうと、問題がこじれてしまいやすくなる。

不審な名称の水没車の買い取りサービス

水没車でも事故車でも需要があるところにあるものなので、動かない車だからといって自分で廃車処分にするしかないというわけではない。しかし、そのような車の売却は信頼できるしかるべき業者に依頼すべきである。

国民生活センターに寄せられた相談例では、東北地方の相談者から「水没車救済現金化相談室」という名称の業者のチラシがポストに入っていたが、この業者に売却して問題はないかというものだ。

自分で廃車にするには廃車費用やレッカー代など何かと費用がかかるため、買い取ってくれる業者がいることはありがたい。実際にそういう事故車・不動車専門に買取を行っている業者もある。

しかし、この相談事例では業者の名称が不審極まりない。また、業者が水没車をチラシを直接入れてまで買い取りたいというのも訝しく感じられる。

水没車を売却するのなら、自分から調べて依頼した方が安心だろう。チラシの業者に依頼したい時は、連絡する前にネットで調べるぐらいのことはして、契約する前に契約書の中身をよく確認することが大切だ。

なかには「儲かればそれでよい」と震災をダシにする悪徳業者もいるので注意すべきである。

被災地のことで脅す

「被災地の人のためだから」という大義を名分に所有する車の売却を迫られた例も報告されている。

震災直後のことだが、国民生活センターに相談された内容によると、ある日突然中古車買取業者と称する者が自宅に訪ねて来て、相談者の2台所有するうちの1台を被災地に回すために譲ってくれないかと言われたというのだ。

相談者が断っても、「被災地がどうなってもいいのか」などと恫喝し、その後も何度も自宅まで尋ねてきたという。震災直後の当時ならいざ知らず、現在、このような大義名分で車売却を迫る業者がいたら、100%詐欺業者だと考えてよいだろう。

いや、震災直後であっても一般の人の自宅まで押しかけて売却を迫るような業者はいなかったはずである。大きな災害の後は車の供給が不足するため、車を安値で無理やり買い取ろうとする輩が現れる。

拒否しているのに何度も売却を迫ってくるようなら、身に危険が及ぶ可能性もあるので、すぐにでも警察に相談すべきだ。

まっとうな中古車買取業者が、「被災地の人のため」などという理由で車の買取に押しかけてくることは絶対にあり得ないことを覚えておくべきである。

その他のトラブル一覧

交渉中

以上、実際に国民生活センターに寄せられたトラブル事例を見てわかることは、解約の可否や解約料に関するトラブルが多いことがわかる。

実際、国民生活センターの発表によると、車売却のトラブルで寄せられる相談の半数以上が解約に関するものだという。

同じように、査定額に同意して契約を交わした後から、業者が難癖を付けて一方的に減額を要求してくるケースも多い。

以下に挙げるトラブル事例にも解約や後からの減額に関するものがあるが、いろいろな手口があることを知っておこう。また、ネットの車査定一括サービスの利用によるトラブルもある。具体的なトラブルの例を見ていこう。

走行メーター改ざん歴の車だったので減額請求

走行メーターの改ざんを理由に減額を請求してくるケースも見られるが、ほとんどが悪質な言いがかりだと考えてよい。

確かに、走行メーターを改ざんして実際より少ない走行距離に見せかけて高値で車を売却しようという者もいないではない。だが、トラブルに発展するケースでは、売却者が自身で改ざんしているはずがないだろう。

では、なぜこうした理由で減額を請求されるかというと、実際に改ざんされていた場合と完全な言いがかりの場合の二つの可能性が考えられる。

売却者が改ざんしていなくても、それが中古で購入した車だった場合、以前の所有者が走行メーターを改ざんしていたことはあり得る。しかし、この場合、業者の主張自体に間違いはなくても、業者が査定して契約を交わした後であれば、査定時点でそれを見抜けなかった業者に責任がある。

プロが査定して算出された査定額に同意して契約したのであるから、後から走行距離に改ざんがあることが判明したからと言われても、売却者がその請求に応じる必要はまったくない。

完全な言いがかりのケースでは、悪質な詐欺業者であるわけだから、警察や国民生活センターに相談すべきである。

キャンセルしたいのに買い手が既にいると言われてキャンセル出来ない

中古車買取業者のなかには、バックオーダーという方式で中古車の販売を行っているところがある。そういう業者に売却を依頼すると、査定の翌日にキャンセルを申し入れても、既に買い手がいるのでキャンセルできないという言われる可能性がある。

というのも、バックオーダーとは、先に顧客から注文を受け、それを元に適した中古車をオークションや買取査定で仕入れるという方法だからだ。つまり、あなたが売却を決断する前にすでにあなたの車を欲しい人がいるわけである。

バックオーダーでは手付金も支払われることもあるため、売却の契約を交わした後では業者としてもキャンセルに応じるわけにはいかないという事情があるのだ。こうしたトラブルに巻き込まれないためには、じっくり契約条項を確認して不明点をなくしてから契約することだ。

つまり、査定したその場で営業マンに乗せられるまま契約してはいけない。すぐにでも車を手に入れた営業マンは、「今契約してくれれば〇万円上乗せします」というようなことも言うだろう。

しかし、少なくとも1日は間を置いて冷静に考える時間を作るべきである。もちろん、代金を受け取る前に車を引き渡さないことにも注意してもらいたい。

車の価値を見るために査定サイトを利用したら・・・

車の一括査定サイトの利用についても国民生活センターには相談が寄せられている。一括査定サイトは、一度に多くの中古車買取業者に査定を依頼できる便利な方法ではあるが、どういう仕組みのものかをわかっていないためにトラブルになることがある。

たとえば、国民生活センターに寄せられた事例では、相談者が愛車の現状の評価を知りたいという軽い気持ちで一括査定サイトを利用したところ、申し込み直後から多数の業者の営業電話がかかってきて困っているというものだ。

相談者としては営業電話がかかってくるとは思わなかったとのことだが、実際はサイトのどこかに業者から電話があることもあると記載されているはずだ。

そもそも業者側としては車を買い取って初めて商売が成り立つわけで、いくら無料査定といっても、本当に査定だけでは業者にとって何のメリットもない。

利用者もそのことをよく心得てサイトを利用すべきだろう。営業を断るのが苦にならないという人でなければ、「どのぐらいの値が付くだろう」という軽い気持ちで利用することはお勧めできない。

それを知らないがゆえに営業電話に悩まされるというトラブルに発展するのである。

二重契約をしてしまった・・・

一括査定サイトに関しては、利用者が誤って二重契約してしまうというトラブルも報告されている。二重契約とは、すでにある業者と売買契約を交わしているにもかかわらず、別の業者とも売買契約を交わすことだが、通常の車売却ではありそうにないことである。

しかし、一括査定を利用すれば簡単に複数の業者に査定を依頼できるため、先に来た業者と売買契約を結んでいるにもかかわらず、次に来た業者の査定額の方が高かったために、先の業者は断ればよいと軽く考え、後から来た業者とも売買契約を結んでしまうといったことが起こるのだ。

この場合の非は当然ながら利用者にあり、二重契約をしてしまったら断る方の業者から違約金を請求されるのも仕方のないことである。

これを防ぐには、一括査定を利用する時はすべての査定額が出そろうまで契約しないことだろう。

業者としては良い車をライバルに持って行かれないために、「この場で契約してくれたら〇万円上乗せする」というようなことを言うものだが、その言葉に釣られて契約を焦らないことが大切だ。

車売却の際は、査定から契約まで冷静に考えるための時間を置くのが基本である。

トラブルを回避する方法

パソコンを見る3人

以上見てきたように、車の供給不足に端を発する車売却を巡る業者と消費者のトラブルは増加傾向にある。トラブルの内容は個々の事例によってさまざまだが、大別すると、解約と解約料を巡るトラブル、契約後の売却代金の減額や未入金に関するトラブル、車買取一括査定サイトの利用に伴うトラブルなどが主だったものである。

震災直後は震災を口実に強引に車を手に入れようとする悪徳業者も現れた。詐欺行為など明らかな犯罪行為を働く業者はもってのほかだが、それ以外のケースでも、利用者が車売却についてある程度の知識を持っていればトラブルを回避できることがほとんどである。

そこで、以下にトラブルを回避するための具体的な対処法を解説しよう。

その場で契約しない

「今乗っている車がいくらぐらいになるだろう」という軽い気持ちで無料査定を受けただけでも、買取業者は契約を迫るものである。業者としては契約しないことには商売にならないのでそれも当然だ。

そのため、「今契約してくれたらこの金額で買い取る」などと甘い言葉を囁かれることも多い。その言葉に乗ってよく考えずに契約してしまうことが、のちのトラブルを引き起こすのである。

最初から金額にかかわらず売却すると決意しているのでなければ、いくら高額な買取価格を提示されてもその場では契約しない方が賢明である。

査定を受けたら契約前にいったん考える時間を確保しよう。契約内容をよく確認し冷静な頭で判断することが大切だ。

解約料は契約書通りとは限らない

買取業者のなかには、契約条項のなかに「買取価格○○万円以下の場合、解約料として一律〇万円を請求する」などと定めているところがある。

しかし、契約書に記載されているからといって、必ずしもこの通りに支払わなければならないわけではない。消費者契約法第9条第1号によると、契約を解除する際の違約金についての条項において、事業者に生じる平均的な損害額を超えるような違約金は無効と定められている。

したがって、買取価格より解約料の方が高くなるケースなどは、この法律により無効であると考えられるので支払いを拒否しても構わない。納得いかない解約料を請求される場合は、その根拠や内訳を明示するように要求しよう。

査定サイトに個人情報を書き込むときは勧誘があると認識しておく

インターネットの一括査定サービスは、複数の買取業者に同時に査定依頼を出すことができるため、時間や手間をかけずに高値で車を売却することが可能だ。

しかし、こうしたサイトは業者が顧客を見つけるためのものであるため、営業の電話は必ずあるものだという認識で利用するべきである。

実際、サイトにもその旨が記載されているはずだ。「自分の車にいくらぐらいの値段が付くだろう?」ぐらいの軽い気持ちで個人情報を書き込むと、しつこい勧誘に悩まされるといったトラブルの原因である。

勧誘をきっぱり断る自信があるという人以外は、車を売る気もないのに利用するべきではない。

必ず契約書に目をとおす

車売却において解約や買取金額のトラブルを回避するには、契約前に契約書の内容をしっかり確認することに勝る対処法はない。

中古車に限らず契約を結ぶときは、すべての契約条項をお互いが承諾していることが前提である。ろくに目を通さず契約書に署名すると、たとえその内容に不備があったとしても本人が承諾していることになってしまう。

もちろん詐欺行為や法的に不備がある契約条項は、たとえ契約完了後であっても撤回することは可能であるが、そのための手間や労力を考えれば初めから防ぐに越したことはない。

車売却に関するトラブルの多くは、契約書にサインする前に回避できるものが大半だと認識してしっかり目を通すべきである。

売却代金を受け取る前に、書類と車両をすべて渡すのはリスクがある

売却代金を受け取る前に、車両と車検証・名義変更に必要な書類等を業者にすべて引き渡すのはリスクが大き過ぎる。

契約して車を引き渡したにもかかわらず、売却代金が支払われないという相談が多いことを考えても、このことは念頭に置いておいてもらいたい。

確実に売却代金を受け取るためには、車両と書類の引き渡しと同時に現金を受け取るようにすべきである。たとえ車両だけ先に引き渡すことになったとしても、名義変更に必要な委任状や譲渡証明書まで先に渡すのは避けるべきだ。

どうしても先に引き渡す事情があるとしても、売却代金の入金日について業者と書面で取り決めを行うべきである。

契約後の車に瑕疵があっても解除や減額を認める必要はない

契約書にサインして車を引き渡した後で、業者から一方的に修復歴や事故歴が判明したので減額(解約)を要求されるトラブルが多い。

確かに車に瑕疵があった場合、業者は売却者に対して瑕疵担保責任を根拠に契約解除や損害賠償を要求することは可能だ。

しかし、車売却においては、契約前にプロの査定士による査定が行われるわけだから、通常の修復歴や事故歴などプロの目で簡単に見抜けるはずだ。

それができなかったということは、過失は業者側にあるわけで、売却者が責任を負う必要はない。

たとえ契約書に「瑕疵が判明した際は契約後にも減額できる」などという条項があったとしても、消費者契約法に基づいて無効を主張することが可能である。

実際にトラブルにあった場合は消費生活センターに相談

パソコンとスマホを使う女性

中古車は一台として同じ状態のものがないため、車売却にはトラブルが起こりやすい。しかも、通常、車を売却する側は買取業者よりも知識や経験の点で大きく劣る。

しかし、契約する前にしっかり契約書の内容を読み、不明点をなくせば、大部分のトラブルは回避できるはずだ。

たとえ契約書に規定されていても、消費者契約法に反する内容であれば無効を要求できることを知っておこう。それでもトラブルに巻き込まれた場合は国民生活センターや消費生活センターに相談してアドバイスを受けることをお勧めする。

なお、国民生活センターは国の管轄する独立行政法人であるが、消費生活センターは地方公共団体の運営する機関である。

国民生活センターが最寄りにあるならそちらに相談しても構わないが、各都道府県に市町村単位で存在する身近な消費生活センターの方が相談しやすいだろう。

どちらの機関も消費者が抱えるトラブルや問題を解決するための存在であり、車売却においても強引な買取や解約に関するトラブルについてアドバイスが得られる。

ただし、消費者生活センターは業者に返金を強制することはできない。詐欺など不法行為のある業者については警察に相談しよう。

まとめ

メモを取る

以上見てきたように、東日本大震災以降、車の供給が不足したために、中古車買取業者による強引な勧誘や買取に関するトラブルの報告件数が増加している。

業者としてはできるだけ安く車を手に入れたいという事情があるからだが、売却する側としても業者の言い分に乗って簡単に契約しないことが大切である。

車売却のトラブルで特に多い解約に関してや契約後の売却代金の減額などに関する事例からもわかるように、契約前にじっくり契約書の内容を確認しておけば回避できるものが多い。

とはいえ、中古車買取業者に対して一般の消費者は、車の売買についての知識や経験が大きく劣ることは確かだ。それにつけ込む悪質な業者も一定数存在しているので、こちらが注意していてもトラブルに巻き込まれる可能性もあるだろう。

そういう時は、消費者のトラブルの解決を図る国民生活センターや消費生活センターに相談してアドバイスを受けよう。

また、一括査定サイトの利用に関する相談事例も増えている。一括査定サイトは車の価値を知るための便利な存在ではあるが、あくまで車を売却する目的のためのサービスであることを忘れてはいけない。

業者も車を買い取ってこその商売であるから、査定を依頼した際は、売却を求める業者からの営業があるものと認識しておくべきである。