中古車購入の契約を交わしてから、もしくは納車される前に購入をキャンセルしたいと思うケースも少なくない。キャンセルしたい事情は人それぞれであるが、原則として中古車の購入はキャンセルできない事になっているのだ。
ただ条件によっては購入のキャンセルが可能になることもあるが、その際にも高額なキャンセル料が請求されることもあるのだ。
ここでは中古車購入のキャンセルができる状況や注意点、請求されるキャンセル料についてまとめている。
中古車の購入をキャンセルする相談が多いため注意が必要
中古車は実際に買ってからキャンセルを申し出るケースもあり、近年は購入者側も販売店側からもキャンセルに関する相談が多く寄せられている。
例えば以下のような相談が多いようだ。
ケース① | 修復歴なしの車を購入したが、購入後事故車と判明したのでキャンセルしたい |
ケース② | 個人間で車を購入したが、すぐに故障したので返品・返金してもらいたい |
ケース③ | 契約したが納車前で、他に良い車が見つかったのでキャンセルしたい |
ケース④ | 口約束をしたためキャンセル不可と言われ、キャンセルするならキャンセル料をと請求された |
ケース⑤ | オークションで車を購入したが、異なる車体でキャンセルを希望したが応じてくれない |
もちろんこれ以外にもいろいろなキャンセル事例があり、訴訟にまで発展したケースも少なくないのだ。
中古車の購入契約は基本的にキャンセルできない
中古車の購入契約を交わしてから、何らかの理由でキャンセルしたいと思っても、原則としてキャンセルはできないことになっている。クーリングオフ制度があるのだから、契約してから8日以内ならキャンセルできるのでは、と思う人もいるだろう。
だが、クーリングオフ制度はそもそも通販や訪問販売などで、商品についてよく理解しないままに購入した時に、後からよく考えたら不要なものだったというケースに用いられる制度である。
中古車は自分で中古車を探して、じっくりと検討して1台を選んでいることから、これには該当しないのだ。
そもそも契約とはキャンセルしないことが前提に取り交わすものであり、だからこそ安易に契約はできないのだ。もし中古車を購入する際に、費用面や車種選びなどで不安が少しでもあるなら契約すべきではない。
契約日前ならキャンセルをすることは可能
中古車の購入のキャンセルはあくまで契約の前か後かが重要になってくるため、契約日前であればキャンセルは可能である。契約とはあくまで書面などにサインをした場合であり、口約束だけでは契約には至らない。
だが後々トラブルになることもあるため、口約束でも絶対に買いますなどとは言わない方がいいだろう。また中古車の契約日には明確な定義があり、以下のうちで早い日が契約日と定められている。
- 車の引き渡し・納車された日
- 車の名義変更が完了した日
- 注文により販売店が修理・改造などを開始した日
またこれ以外にも販売店で車の売買契約を交わせば、それが契約日となる。もしそれよりも前の段階であれば、基本的にキャンセルは可能である。
契約日前のキャンセルでもお店によってはキャンセル料が必要
中古車の購入では原則として契約日前であればキャンセルができるのだが、実はこれもお店によって変わってくる場合もあるのだ。
自動車注文書標準約款では契約の成立日が車の登録日、車の修理・改造開始日、車の引き渡し日のいずれかの早い日となっている。
だがお店によっては注文書を交わした時点で契約が成立するという約款を用いている場合もあるからだ。その場合は一般的な契約日前でもキャンセルはできず、キャンセルするならキャンセル料が必要になることもある。
また実際の契約日前であっても、購入を口約束しすでに修理や改造などを開始している場合には、キャンセルすると販売店が損害を被ってしまう。そんな時には損害が発生した分をキャンセル料として請求されることもあるのだ。
不当なキャンセル料を請求された場合は支払う必要はなし
契約を交わした後のキャンセルは店舗によっては可能だが、その場合はキャンセル料が請求されることもある。基本的に購入者側の事情により契約後にキャンセルした場合には、請求されたキャンセル料を支払い必要があるのだ。
キャンセル料については店舗によって異なるが、一般的にはキャンセルする事で生じた販売店側の損害の実費程度で、金額で言えば車の代金の約10%が相場とされている。
だが中古車販売店の中には悪質まがいの店舗があり、車の代金の30%のキャンセル料を請求されることもあるようだ。
悪質な販売店だと事故車を修復歴なしとして販売し、キャンセルされたら高額なキャンセル料を請求するという手口を用いることもある。だがいくらお店の契約書にキャンセル料が記載されていたとしても、法外なキャンセル料は支払う必要はないのだ。
中古車購入の契約した翌日以降でもキャンセルできる『3つのパターン』
原則として中古車購入の契約をしたらキャンセルはできないのだが、以下の3つのパターンであれば、契約後であってもキャンセルは可能である。
【パターン1】隠れた瑕疵が見つかった
中古車購入の契約をキャンセルできるケースとしては、購入してから隠れた瑕疵が見つかった場合だ。例えば購入した中古車は修復歴なしの車だったのに、購入してから事故車・修復歴ありの車だったことが判明した場合である。
修復歴については販売店側は購入者に伝えなければいけない義務があるのだが、それを隠していたもしくは伝えなかった場合は販売店側の瑕疵となり、契約のキャンセルは可能だ。
これは販売店側が故意に隠していた場合はもちろん、知らずに売ってしまった場合も該当になる。瑕疵が見つかった場合には、無償キャンセルはもちろんだが損害賠償も請求できるのだ。
ただ購入時に事故車・修復歴ありと知っていた、不具合も販売店から伝えられていた場合は瑕疵とはならないのでキャンセルできない。
【パターン2】契約した購入者が未成年
中古車の契約をした購入者が未成年だった場合、購入のキャンセルができる。車の運転免許は18歳から取得できるため、大学生になってすぐに車を購入するというケースもあるだろう。
だが未成年が購入した場合には、販売店側に過失がなくてもキャンセルできるのだ。もちろん未成年が車を購入できないということではなく、未成年であっても親の同意があれば購入は可能だ。
これは民法により未成年が法定代理人つまり親の同意がなく契約を行った場合には、契約の取り消しができると定められているからだ。
そもそも販売店側ではこういった法律も知っているだろうから、まともな販売店なら親の同意がない未成年には車は販売しないだろう。
【パターン3】中古車の購入を口約束
中古車を購入する際、購入する側が販売店に対して、絶対に買うので他の人には売らないでください、などと口約束をすることもあるだろう。だが実際は購入をキャンセルせざる得ないこともあるものだ。
販売店側は口約束もれっきとした契約だ、というかもしれないが基本的に口約束での購入は正式な契約とはみなされないため、キャンセルが可能である。また口約束とともに手付金や内金という名目でお金を支払うこともあるだろう。
手付金は基本的に戻ってくるお金ではないのだが、本契約前に販売店に預けるお金の場合は申込証拠金となるため、契約しなければ返金されるのだ。
ただキャンセルできるとはいえ、販売店とのトラブルにならないためには安易な口約束は避けるべきだ。
車をキャンセルするときの注意点
車をキャンセルする時の注意点としては以下のような点を覚えておくといいだろう。
- 車の契約は慎重に
- キャンセルできないことを頭に入れておく
- キャンセル時のキャンセル料や違約金
- 消費者契約法の確認
- キャンセルは少しでも早くする
販売店によっては購入後でもキャンセルに応じてくれるところもあるが、基本的にはキャンセルできないものと思っておくべきだ。そのため、キャンセルする事がないように契約は慎重に行わなければいけない。
ただ慎重に契約してもやむを得ず購入をキャンセルせざるを得ない場合もある。そのため、万が一キャンセルする時のことも頭に入れて、キャンセル料はどれくらいになるか、いつまでならキャンセル可能かを契約前に販売店に確認をしておくべきである。
まとめ
このように中古車購入のキャンセルではさまざまなトラブルになることもある。もちろんやむを得ない場合もあるのだが、基本的にはキャンセルはできないということを頭に入れ、本当に何の問題もなく購入できる段階になったら契約するのがベストだ。
ただ事故車・修復歴車であれば、正式契約後であってもキャンセルできるため、泣き寝入りをする必要はない。またキャンセル料を支払わなければいけない状況だとしても、金額によっては支払う必要がないためその点も知っておくといいだろう。