日本では、新車であれ中古車であれ、車屋にフラッと立ち寄ってその場で買って乗って帰ることはできない。
契約だけならすぐにできるが、それにもいろいろ準備が必要だし、中古車への買い替えであってもそれなりの出費になるので、じっくり検討して決めるのがふつうだ。
また、ディーラーや販売店で見積書をもらってから納車までの時間もある程度見ておかなければならない。
見積書を最初にもらった段階ですぐに契約すれば、最短で車を手に入れることは可能だが、書類の用意や手続きの必要があるので時間的に余裕を見ておいた方がよい。
購入の流れをしっかり把握しておき、何度か交渉を重ねて賢い買い物をしたいものである。
【納車までの流れ】ディーラーで注文
目当ての車があるとしても、メーカーに直接注文できないのが車というものだ。新車ならディーラーで注文することになる。
欲しい車種が決まっていても、オプションの追加や値引きなどがあるので、まずはディーラーだ。
1.ディーラーがメーカーに発注
注文を受けたディーラーは、車種、グレード、オプション品などの内容をメーカーに発注する。
受注したメーカーは、その内容に沿った車をメーカーに移送する。在庫がない車は受注後に生産することになる。
2.必要書類を揃える
どんな車でも公道を走る以上車検を受けなければならない。車購入における必要書類とはそのためのものだ。ただ、車購入が初めてでも何も不安に思う必要はない。
ディーラーに行けばそこの営業マンが詳しく教えてくれる。先方で用意してくれるものもあるので、手間もそれほどかからないだろう。
なお、軽自動車の購入では実印と印鑑証明書は必要ない。認印があればOKだ。また、車庫証明は地域によって必要なところとそうでないところがある。ただ、いずれにせよ軽自動車の購入には住民票が必要だ。
3.登録・諸費用清算
新車の購入の場合、注文から納車までにおよそ1カ月は見ておこう。ただ、その間もただ待っていればよいわけではない。
納車までに車の登録や代金の精算が必要になる。なお、この1カ月という期間は前後することもよくある。
登録の手続きを自分で行うか代行してもらうかによっても変わるし、人気車種の場合、受注生産となって3カ月以上待つこともある。また、在庫があればわりとすぐに用意してくれることもある。
4.納車
代金の精算と登録手続きが完了して、車が用意できたら、いよいよディーラーから納車される。
なお、新車でも納車の時には、車検証の記載内容やオプションの内容についてチェックしておくことを忘れないようにしたい
【注意点】ディーラーや中古車販売店に行き契約して乗って帰るは不可能
新車でも中古車でも、名義変更、車庫証明、車検、保険などの制限や手続きがあるので、ディーラーや販売店に欲しい車があったからといって、その場で買って帰ることはほぼ不可能だ。
海外のドラマや映画で、フラッと立ち寄った車屋でお金を払ってそのまま乗って帰るという場面を見たことがある人もいるだろうが、日本ではほぼ不可能と思ってよい。
中古車販売店のなかにはすぐに乗れることを売りにしているところもあるが、通常より早いというだけで即日という意味ではないことに注意が必要だ。
軽自動車ならば車庫証明の不要な地域もあるが、それでも即日で乗って帰るのをほとんどの販売店が認めていない。
車の買い替え時には用意すべき書類がある
残念ながら日本では欲しい車を見つけても、簡単に「これください」と買って帰ることができない。
海外ではお金さえ払えばすぐに乗って帰れる国もあるが、日本の公道を走る車は車検や保険など条件が必要なので、それを満たすことを証明するためのいくつかの書類が必要になる。
そう何度もある機会ではないから車購入に必要な書類を把握していない人もいるだろう。そこで、車の購入時に必要になる書類を解説する。
ただ、知っておくのと知らないのでは手間や労力が違うので、ある程度は覚えておく方がいいだろう。
新車購入時(普通車&軽自動車)に必要書類一覧
新車購入時に必要な書類は以下になる。
実印・印鑑証明書(普通車のみ)
日本では、車は不動産などと同じように資産として考えられている。そのため、新車でも中古車でも登録や名義変更の手続きで実印が必要になる。
印鑑証明書が必要なのは、その実印が本人のものであることを証明する書類であり、これがあることで実印の信頼性が保証される。
なお、車の名義が自分ではなくディーラーや信販会社の場合は、実印がなくても認印と住民票があれば良い場合もある。
車庫証明書(取得の際に住民票も必要)
車を購入するということは、今後必ずどこかに保管することになる。車の保管場所は勝手にどこにでも決めてよいものではなく、必ず警察に申請して車庫証明書を取得しなければならない。
保管場所が確保できない場合は新車登録ができないのだ。
車庫証明書は自分で取得してもよいし、ディーラーなどに手続きの代行を依頼することもできる。ただし、代行の場合は手数料として1万円程度必要になる。
委任状
車の名義変更などの手続きは自分で行うことも可能だが、かかる手間と時間を考えると販売店に手続きを代行してもらう方が便利だ。その際に必要になるのが委任状である。
委任状とは、それを持参する者が本人の代わりに手続きを行ってもよいという証明書である。そのため、本人がそれを承諾していることを示すために、委任状には実印が押されていなければならない。
また、実印の正当性を示す印鑑証明書も併せて提出する必要がある。
車両代金および諸費用(現金一括orローン契約)
車を購入するのだからその購入費用も用意しておかなければならないのは当然だ。現金一括で購入するつもりなら、まとまった現金を契約までに用意しておこう。
なお、契約時に全額支払うのではなく、契約時と納車時に分けて支払うケースもある。
ローンで購入するのであれば、契約時に現金を用意する必要はない。ただし、契約までにローン会社の審査には通過しておかなければならない。
認印&住民票(軽自動車のみ)
普通自動車は資産と見なされるため購入手続きには実印と印鑑証明書が必要になるが、軽自動車の場合は必要とされない。
ただし、軽自動車の購入の際は軽自動車検査協会に必要な書類を提出しなければならないため、認印と住民票が必要になる。
認印はシャチハタ以外ならなんでもよい。住民票は住んでいる市区町村役場で取得できるが、そのためには役所の開いている平日の日中に時間を確保する必要がある。
購入後に渡される書類一式
車を購入後、納車時に車検証や自賠責保険の証明書などいくつかの書類が販売店から渡される。販売店で中身はしっかり確認されているはずだが、自分の目でも不備はないかチェックしておこう。
車検証
車検証とは、車が日本の公道を走行する基準を満たしていることを証明する書類だ。「自動車検査証」というのが正式な名称だ。車検証がなければ行動を走行することができない。
常に車に載せておかなければならないものなので、納車時には内容をしっかり確認しておこう。問題なければダッシュボードの中に保管しておく。
自賠責保険証明書
正式には「自動車損害賠償責任保険証明書」というこの書類、車だけでなくバイクや原付の持ち主も絶対に加入しなければならない自賠責保険に加入していることを証明する書類のことだ。
自賠責保険証明書は常に車に積載しておかなければならない。証明書を積載していないと50万円以下の罰金が科される。
車の所有者ではなく、その時点で運転している者が罰金の対象になるので、車を運転する時は必ず積載されていることを確認しなければならない。
自動車税納税証明書
自動車税を納税していることを示す証明書が自動車税納税証明書だ。
車検の際に必要であり、車を所有するすべての人が持っているはずの書類だが、中古車の場合、前の持ち主から受け取らずに後で困ることになったというケースもある。
かならず確認するようにしよう。
なお、自動車税納税証明書を紛失した場合は、都道府県の自動車税事務所や運輸支局にある自動車税納税書で再発行してもらえる。
リサイクル券
2005年に定められた自動車リサイクル法では、すべての車の所有者に、エアバッグ、シュレッダーダスト、フロン等の処分に必要な費用を負担することが義務付けられている。
それがリサイクル料であり、リサイクル券とはその支払いを証明する書類である。
リサイクル料は新車を購入する際に支払うものだが、車の最終的な所有者が負担するものなので、中古車の購入でも一時的にリサイクル料を負担し、その証明としてリサイクル券を受け取る。
廃車まで必要なものなので必ず確認しよう。
ちなみに紛失した場合については以下のとおりだ。
リサイクル券を紛失または毀損しても、車検や買い替えに影響はなく、車検時にリサイクル券を提示する必要もありません。
買い替え時にリサイクル料金の預託証明書が必要ということであれば、「自動車リサイクル料金の預託状況」が証明の代わりとなりますので、本ホームページ「自動車ユーザー向け/リサイクル料金検索」(ご利用時間帯:7:00~24:00)から印刷してご利用ください。
「自動車リサイクル料金の預託状況」の印刷については、こちらをご参照ください。
取扱説明書
新車を購入したのであれば取扱説明書は必ず付いてくるものだが、中古車の場合、最初からないこともある。
エンジンのかけ方から給油口の開け方といった基本的なことから、手入れの仕方やトラブル時の対処法まで記載されているので、できれば手元に置いておきたい。
また、車の売却時には取扱説明書がないだけでマイナス査定ともある。中古車でも年式の古すぎる車でなければメーカーから取り寄せることが可能なので、販売店にも確認しておこう。
整備記録簿
整備記録簿は非常に重要な書類である。その車の状態を記録した書類であり、中古車の場合は現時点の損傷箇所もこれによって把握できる。
中古車を購入した場合は、見積もりの内容と一致しているか納車時に必ずチェックするようにしよう。
なお、整備記録簿は、定期点検を受けた記録を最低2年間は保管しておくことになっているので、ほかの必要書類と一緒にダッシュボードに大切に保管しておくべきである。
各ディーラーの保証サービスの書類
メンテナンスや故障時の修理など、車購入の際に保証サービスは必須といってもよい。ただし、販売店によっては口約束だけで済まそうというところもあるようだ。
しかし、保証書の類は必ず書面で発行してもらうべきである。
書類がないと、故障などの万一の時に修理を断られたりぼったくられたりするリスクもある。書面は出さないという販売店は信用できないので車の購入はやめた方が賢明だろう。
とりあえず話を聞くだけの状態で即決しない
車は、それがたとえ中古車であっても、服や日用品を買うのとは違い、失敗の許されない買い物である。決して安い買い物ではないので、買った後で「失敗したかな」では済まないのだ。
気に入った車があったからといって販売店で話を聞いて、即契約を決めるようなことは避けよう。
販売店としては買ってもらうことが第一の目的なので「今ならこれだけ値引きできます」などと旨い話を持ちかけてくることもあるだろう。
しかし、そこはグッとこらえて、家族や知人とも相談する時間を置くべきだ。冷静に考えることで、メリット以外の面も見えてくる。デメリットも検討し、それでも本当に買うべきかを慎重に考えたい。
実印を押して契約するときはもう一度よく考えよう
ディーラーや販売店に欲しい車が見つかると、すぐにでも乗って帰りたくなるものだ。
さらに、営業マンのセールストークを聞いていると、「今契約しなければ一生後悔する」とまで思うこともあるかもしれない。
確かに魅力的な車であればすぐにでも契約したい気持ちはわかるが、車の契約で急いで得することなどほぼない。
「話を聞くだけ」のつもりだったのに、いつのまにか契約書にハンコを押す段階まで進んでいることもあるだろう。しかし、実印を押す前にもう一度よく考え直すべきだ。実印を押すということは契約成立を意味する。
この社会はすべて契約で成り立っていると言ってもよく、それを守らなければ法的に拘束されてしまう。契約が成立すれば、消費者は代金を支払わなければならない。
後から「やっぱりキャンセルしたい」と言っても、支払ったお金は返ってこないこともあるのだ。契約書に実印を押した後でキャンセルが可能なケースもないではない。
そうならないためにも、契約書に判を押す前にあらゆる角度からもう一度検討するべきである。
実印の上下がわからないのは最後に考え直す時間をもたせるため
安い三文判など印面を見ればどちらが上下かすぐにわかるだろう。しかし、なかには文字の上下がわかりにくいものもある。
そのため、印鑑にはどちらが上下かすぐにわかるように、「あたり」や「さぐり」と呼ばれる削り部分が付いていることがある。
ただ、重要な印鑑になるほどそういう印が付いていないことも多い。その理由には諸説あって、「自分の分身や魂同然の印鑑を削るということは、自分の運勢を削るようなもの」という縁起を担いだ説が有力だ。
もう一つの説が、書類に押印する前にもう一度印面を確認しなければならないことで、「本当に契約していいのか?」と考え直す時間を持たせるためというものだ。
「考え直す時間を作るため」という意味は、開運業者がもっともらしく売り出すためにでっち上げただけの話で、本来の意味ではないとも言われている。ただ、それにも一理あることは確かだろう。
車の購入は人生のなかでも大きな決断である。お金が有り余っている人でもない限り、「ちょっと違ったな。ま、いっか」では済まない。
だからこそ、契約書に押印する前に、もう一度、本当にその車を買うべきかを考えるべきなのだ。
まとめ
新車でも中古車でも、ディーラーや販売店にフラッと訪れ、代金を支払ってそのまま乗って帰るということはできない。
海外では可能な国もあるが、日本では車が公道を走行するのに車検や保険などの制限や条件が課されるからだ。
また、消費者がメーカーに直接注文できないのも、日本では見積もりから納車までに時間がかかる理由の一つである。
ディーラーは、客から注文を受けてメーカーに発注する。在庫があればメーカーからディーラーに移送されるが、ない場合は受注してから生産することになる。
そのため、車購入には早くても1カ月は見ておかなければならない。
契約までには、車庫証明書や委任状など必要書類を一式用意しなければならない。登録や名義変更の手続きに必要な実印や印鑑証明書も準備しておく。
必要書類を揃えて初めて契約書にサインできる状態になるが、契約書に判を押せば契約が成立する。その後でキャンセルすることは難しいので、本当に契約してよいかじっくり時間をかけて慎重に考えるべきだ。
納車時には、販売店から車検証や自賠責保険証明書など必要書類が渡される。
常に車内に携帯しておかなければならない書類なので、必要なものがそろっているか確認しておこう。特に中古車の購入では、すべての書類がそろっていないこともあるので注意が必要だ。