車下取りは新しい車を買うことを前提に現在ユーザーが所有している古い車を新車ディーラーや中古車販売店に買い取ってもらうサービスを指す。つまり、車を買い替える時に利用するのが車下取りというわけだ。
車下取りでは買い取られた車の査定金額が次に買う車の価格から引かれることになる。これにより、単に新しい車だけを購入する際と比べて安く新車を買うことができるし、古い車の処理も簡単にできる。
しかし、なるべく愛車を高く売り、新車を安く買いたい方は下取りを使うかどうか慎重に考えた方がいいだろう。
なぜか。それは下取りを行うディーラー店はあくまで新しい車を売ることが主な仕事だから、高額査定への期待値は低くなるのだ。そのため、車の買取をメインとする業者を利用する方が圧倒的に高額な査定を狙えるのだ。
手続きスムーズ・トラブルなし・高価買取 3つの満足が手に入る売却方法 |
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方法 | 手続きスムーズ | トラブルなし | 高価買取 |
ディーラー下取り | △ | ○ | × |
店舗買取 | △ | ○ | △ |
車一括査定 | 〇 | 〇 | ○ |
車下取りサービスと車買取サービスの違い
車下取りサービスはよく車買取サービスと比較される。車買取サービスというのは何かというと、新しい車を買うことはなく(買い替えではなく)、単に現在ユーザーが所有している車を買い取ってもらうサービスのことを指す。
一方、車下取りの方はまったく相場を参考にしないわけではないが、車買取と比べるとそれほど厳密ではなく、一般的に価値の低い車でも値をつけてくれる。
これはなぜかというと、車買取はその名の通り、車を買うことが主な目的なのに対して、車下取りの方は新しい車を売ることが主な目的だからである。
下取りをするディーラーにとっては古い車を買取することは二の次であり、ある程度の差であれば相場と違った額の買取になっても構わないのだ。
そのため、車下取りは年式が古い車や走行距離が多い車、事故車・修復歴車などを買い替えたい時に特に便利なサービスといえるだろう。
うまくいけば車買取では0円にしかならないこれらの車でも値がつくかもしれないし、万が一下取りで値がつかなかったとしても引き取ってもらえるからだ。
車下取りの流れ
車下取りを行う時はぶっつけ本番でやるよりもあらかじめ大まかな流れを把握しておいた方がいい。車下取りを完了させるにはいくつかの手順があるので、それらの手順を理解していた方が途中でつまずかずに済む。
車下取りの流れは、まず買いたい車と利用するディーラーあるいは中古車販売店を決める。次にその店舗で下取り車の査定を受ける。
買いたい車の見積もりをもらい、その見積もりに納得できたら店舗と契約を結ぶ。後は必要書類を用意して下取り車を店舗に引き渡し、購入車を店舗から受け取るだけだ。
どのような店舗の下取りでも基本は上記の流れだが、中には独自の手順を踏む店舗もあるかもしれないので、柔軟に対応しよう。
新車ディーラーもしくは中古車販売店で購入する車を決める
下取りに出す車は決まっていても新しく購入する車がなかなか決まらないことは多い。車選びの基準は人によって異なるため、その基準を明確にすることが重要だ。
たとえばテレビCMで見た車に興味を持つのはいいが、なんとなく恰好いいからという理由だけで買ってしまうと後悔する可能性がある。
まずは興味のある車を複数リストアップし、それぞれの燃費や装備、乗り心地などを調べるようにしよう。
下取車があることを伝える
新車ディーラーや中古車販売店は下取りなしでの新車・中古車販売も行っている。そのため、下取車があることを営業マンに伝えなければ相手は単に新車・中古車を買うつもりなのだと思ってしまうので、あらかじめ下取車があることを伝えておこう。
ただし、車の値引き交渉を限界までしたい場合は下取車があることを伝えるのはギリギリまで待った方がいい。
というのも、先に下取車があることを伝えてしまうと、営業マンは購入車の値引き額を調整する可能性があるからだ(下取り査定額を高くした分、購入車の値引き額は低くするといった具合に)。
下取車があることをうやむやにしておけば、当然営業マンはこういった調整ができなくなる。
その店舗で下取りの査定を受ける
下取車の存在を店舗に伝えれば当然その車の査定をするという流れになる。査定といっても難しいことはなく、ユーザーはただ下取車を新車ディーラー・中古車販売店の店舗に持っていって査定士が査定をするのを待っていればいいだけである。
下取りの場合、「査定料」という費用を取られることが多い。これは査定士が査定を行う手数料として請求されるものである。
しかし、車買取店においても査定士が査定を行うが、査定料を取られることはほとんどない。そのため、査定料を支払うことに納得がいかないユーザーも多くいるだろう。
購入する車の見積書を発行してもらう
新車ディーラーや中古車販売店で新しい車を見たり、試乗したりすると営業マンから見積書の発行を提案されることがある。
見積書の発行には費用がかからないので、いつでも自分の好きなタイミングで請求してもいいが、下取車がある場合は下取り額を見積もり内に含める必要があるため、その査定が終わってからにするといいだろう。
基本的には車両本体価格にオプションや諸費用を足して値引き額や下取り額を引いて出た支払い総額とその内訳が記載されている。
見積書の中に下取り額が項目として含まれているかチェック
見積書の中に下取り額が項目として含まれていない場合、支払総額が高くなってしまうので、必ず含まれているかどうかを確認しておこう。
もし記載に不備があれば、すぐに営業マンに報告して見積書を発行し直してもらう必要がある。
また必ずしも「下取り額」と記載されているとは限らないので、「下取り車両価格」や「下取り価格」など、とにかくそれらしい項目が見つかれば問題ない。
納得する金額であれば契約書を終結する
見積書に記載されているすべての事項の金額が納得いくものであれば、契約書を交わして取引を実行する。納得いかない金額の事項があれば別の新車ディーラー・中古車販売店に行くか、あるいは再度営業マンと交渉する。
交渉するのはもちろん構わないが、営業マンとしてもできる対応が限られているので、無暗に話を長引かせるのは避けた方がいいだろう。
最悪の場合、見積書の金額が変わらないばかりか、その営業マンとの信頼関係を悪化させることになってしまう。そのため、妥協できる金額なら早めに契約を締結する決断をした方がいい。
ちなみに個人売買ではなく、新車ディーラーや中古車販売店を利用する時は「注文書」が「契約書」代わりになっていることが多い。
納車日までに必要書類を用意する
契約が締結できたら納車日までに車の売買に必要な書類を用意し、店舗に提出しなければならない。必要書類は複数あり、それらを不備なく用意できなければ納車は行われないので、余裕をもって準備を始めよう。
用意する必要書類は人によって異なる場合がある。そのため、自分がどの書類を準備しなければいけないのかを事前に確認しておくとスムーズだ。
何かわからないことがあれば担当の営業マンに聞けば丁寧に教えてもらえるはずだ。
納車日に所有車を引き渡し・購入した車を受け取る
納車日までは所有車に乗り続け、納車日になったらようやく所有車を店舗に渡し、購入した車を受け取ってそれに乗れるようになる。
また納車日は業者の都合で変わることがある。特に人気車種の場合は納車までに長い期間を待たされることもあるので注意が必要だ。
ケースによっては半年近く待たされることもあり、その場合は当然ながら所有車の相場が変動してしまう。そのことから、納車までの期間が長い時は再査定を行う業者も多い。
逆に業者がどうしても早く下取車が欲しいために所有車だけすぐに引き渡すケースもある。
この場合はユーザーの手元に車がなくなるので、購入した車が納車されるまでは業者が用意した代車に乗ることになる。
車を下取りに出す際に必要になる書類一覧
車下取りで必要になる書類は車検証や自賠責保険証明書、自動車納税証明書など幅広いものがあげられる。
ほとんどが車を売買する時特有の書類であるため、初めて車下取りを利用するユーザーは用意に手間取るかもしれない。
これらがどういった書類であるのか、保管場所はどこなのか、入手方法にはどのようなものがあるのかを把握しておけば、管理がしやすくなるので、まずはそれらについて知っておこう。(参照:国土交通省「申請に必要な書類」)
車検証
車検証(正式には自動車検査証)はいってみれば車の身分証明書のようなもので、該当する車の情報がまとめられている書類である。
車検や街頭検査が行われる際、車両が車検証の情報通りになっているかどうかを見ることで保安基準を満たしていることを確認する。
保管場所は車の中のダッシュボードであることが多い。ここにない場合は車検証交付時にどこか別の場所にしまった可能性が高いので、よく思い出す必要がある。
思い出せない、またいくら探しても見つからなければ再発行してもらおう。
入手方法だが、その車を買った際の納車の時に一緒に渡されるのが基本だ。ただし、そういった決まりがあるわけではないので、納車を行う業者によって車検証を渡すタイミングが異なる可能性がある。
再発行の手続きは普通自動車はその車のナンバーを管轄している陸運局(運輸局・支局)で行い、軽自動車は軽自動車検査協会で行う。
再発行の流れだが、まず窓口で手数料納付書、申請書を受け取る。印紙を購入して手数料納付書に貼り付け、必要事項を記入した書類一式を窓口で提出する。
それらの書類に不備がなければ車検証が発行されるので、名前を呼ばれるまでしばらく待っている。名前を呼ばれたら、車検証の記載内容が正しいか確認して受け取ろう。
自賠責保険証明書
自賠責保険証明書は車を持っている人が加入する必要のある強制保険の保険証を指す。
この保険は正確には自動車損害賠償責任保険といい、事故を起こした時に被害者の補償ができるものである(運転者や物に対する補償はない)。
車検証とも関わりがあり、自賠責保険期間が車検有効期間よりも長くなければ車検証は発行されないようになっている。
そのように車検証との関連性が高いことから、保管場所は車検証と同じ場所にされることが多い。車検証はダッシュボードに保管されることが多いので、基本はダッシュボードを探せば見つかるはずだ。
ちなみにどこの店舗で加入しても保険内容は同じだ。
再発行は加入した保険会社か代理店に連絡すれば手続きしてくれる。自賠責保険は車を買った時に自動的に加入するものなので、加入した保険会社がどこかわからなくなりがちである。
もしわからなければ車を買った店舗に尋ねるといいだろう。
再発行の流れだが、保険会社で配布される再交付申請書に記入・捺印し、本人確認書類のコピーとともに窓口に提出すれば後日発行してもらえる。
自動車納税証明書
自動車納税証明書は自動車税の支払い証明書である。車検証に記載されている所有者は年に1回、その車にかかる自動車税を支払わなければならないことになっている。
保管場所は自宅やダッシュボードであることが多い。車検の時に必要になる場合があるので、車検証とともにダッシュボードに保管するケースも多い。
入手方法だが、自動車税を問題なく納税していれば、毎年5月に自動的に自宅に送られてくる。送るのは管轄の都道府県税事務所であり、再発行もここの窓口で行ってくれる。
再発行に必要な書類は車検証、納税領収書である。納税領収書は自動車税納税から10日以内での再発行の時のみ必要になる(コピーはNG)。
また利用する都道府県税事務所によっては登録番号と納税者を書けば車検証の提出を省略されることもあるし、逆に印鑑や本人確認書類が追加で求められることもある。
特に郵送での手続きは引っ越し前の都道府県税事務所で再発行しなければならない時に重宝する。
委任状・譲渡証明書
委任状、譲渡証明書は下取りに出す車を名義変更する時に使う書類である。
委任状は名義変更手続きを新車ディーラー・中古車販売店に委託することを表明する書類で、譲渡証明書は下取車を新車ディーラー・中古車販売店に譲渡する意思があることを証明する書類となっている。
委任状、譲渡証明書は短期間のみ保管することになるので、保管場所はすぐに取り出せるようなところにすることが多い。そうなるとやはりダッシュボードが一番の候補にあげられる。
入手方法は下取りの取引時に新車ディーラー・中古車販売店から受け取ればOKだ。再発行も新車ディーラー・中古車販売店に連絡すればすぐに行ってくれる。
もっとも、長く保管するわけではないので、そう簡単に紛失することはないはずだ。
また下取車の名義変更と新しく買う車の名義変更の手続きを同時に行う場合は委任状、譲渡証明書をそれぞれ2枚ずつ用意することになる。
実印・印鑑証明
実印は住民登録している管轄の市区町村に登録している印鑑を指す。はじめから「実印」という印鑑が売っているわけではなく、どのような印鑑でも実印登録をしていれば実印として使える。
実印は特に重要度の高いハンコで、銀行印や認印などとは分けて管理する必要がある。特に認印は家族と共用することも珍しくないので、実印と混同しないように気をつけておきたい。
印鑑証明書はその印鑑が実印であることを証明する書類を指す。これがないとその印鑑が本当に実印なのかどうか客観的に判断できないので、実印と印鑑証明は基本セットで用意する。
保管場所は実印の方は自宅となる。車の手続き以外にも使う機会があるので、車内に保管するのは望ましくない(下取りの時だけ車内に保管するのは構わない)。
印鑑証明の方は必要な時だけ発行するので、長く保管することはない。
入手方法だが、まず「実印」にしたい印鑑を用意する。その印鑑と本人確認書類を管轄の市区町村の役所に持っていき、窓口で印鑑登録申請を行う。
申請は窓口で配布される申請書に必要事項を記入し、提出することで行う。
実印登録ができたら印鑑証明の交付申請を行う。これも管轄の市区町村の役所窓口で手続きできる。印鑑証明は何枚でも発行できるので、必要な分だけ発行しよう。
リサイクル券
リサイクル券はリサイクル料金の支払いを明らかにするための書類である。(参照:環境省「知っておきたい自動車リサイクル法」)
A券~D券の4種類あり以下のものとなっている。
A券 | リサイクル料金の預託を自動車リサイクル促進センターが明らかにするもの |
B券 | 該当する車両が使用済みになった時に業者が交付するもの |
C券 | 資金管理料金を自動車リサイクル促進センターが受け取ったことを明らかにするもの |
D券 | リサイクル料金額を通知するもの |
保管場所は車検証と同じことが多い。特にA券、B券は後で使うことになるので、ダッシュボードなど、わかりやすいところに保管しておく必要がある。
入手方法だが、リサイクル料金を支払えば自動的に交付される(リサイクル料金は車購入時に必ず支払わなければならない)。
リサイクル券は再発行できない。リサイクル券を紛失した場合は「自動車リサイクルシステム」の公式ホームページ内の「自動車ユーザー向け/リサイクル料金検索」から「自動車リサイクル料金の預託状況」を印刷して証明書代わりにする必要がある。
戸籍謄本・住民票(現在の住所・氏名が異なる場合のみ)
戸籍謄本は本人の氏名や生年月日、家族関係を証明するもので、住民票は本人の現住所を証明するものである。
これらの書類が必要になるのは結婚で現在の氏名と車検証記載の氏名が異なる場合(この場合、戸籍謄本が必要)と引っ越しで現住所と車検証記載の住所が異なる場合(この場合、住民票が必要)なので、条件に当てはまるユーザーのみ準備しておこう。
戸籍謄本、住民票は必要な時に必要な分だけ発行するものなので、保管場所は特に決まっていない。それでも紛失が怖ければ車検証と同じ場所に保管しておくといいだろう。
入手方法だが、戸籍謄本、住民票はともに管轄する市区町村の役所で発行できる。市民課の窓口に行き、記入した請求書と本人確認書類を提出すればその場で取得できる。
下取り時のちょっとした【豆知識】
新車ディーラー・中古車販売店での下取りの流れと必要書類を把握できたら、「豆知識」についても知っておこう。細かいことでも知っていた方が役立つことは多くある。
車下取りで引き渡す際のガソリンはほぼ無しで大丈夫
車下取りで引き渡す際のガソリン量だが、どのような量であっても問題ない。それで査定額が上下することはないし、満タンにしておかなければならないということもない。
むしろディーラーや中古車販売店によっては営業マンから「ガソリンを減らしておいた方がいい」と言われることもある。
ガソリン量が低い車を引き渡すのは失礼ではないかと思うユーザーも多いが、実際にはそういうわけではないので、できるだけガソリンを消費してから引き渡すようにしよう。
スムーズな流れで車を高く売りたいのなら『車一括査定サービス』を使おう
車下取りは買いたい車と利用するディーラーあるいは中古車販売店を決めることから始める。そして新車購入と愛車の売却を同時に行うような流れになる。
一見、手っ取り早い気もするが、いっぺんに両方の手続きを進めていく煩雑さがあり、スムーズとは言えないだろう。また、肝心の愛車査定額はかなり安く、結果的に新車が安く購入できなかったというケースも多い。
そのため買取を使った方がはるかに得をする。まずは高く売ることに集中することで、新車購入の資金を作ることができる。なおかつ、売ったあとにじっくりとどの車を買うかを決めることもできる。
車一括査定サービスは、ネットを使った簡単な入力手続きを済ませれば、多数の買取業者のなかから、最高額の査定をつけてくれる業者が分かる仕組みとなっている。
まとめ
車下取りは新車ディーラーや中古車販売店が取り扱っている車両を購入することを条件とする代わりに現在ユーザーが持っている車両を買取してもらうサービスである。
新車ディーラーや中古車販売店は車が売れればそれだけで利益が出るので、ユーザーの車の状態がいいものではなかったとしても買取に応じてくれることが多い(もし値がつかなかったとしても引き取りしてくれる)。
下取りの流れだが、まず店舗で購入する車を決める。次に対応してきた営業マンに下取車があることを伝え、下取り査定を受ける。
それから見積書を発行してもらい、その見積書に下取り額が含まれているかをチェックし、その他の事項の金額にも問題がなければ契約を結ぶ。
最後に必要書類を準備し、納車日になったら下取車とともにそれを渡し、購入した車を受け取れば完了だ。
必要書類は最初からユーザーが持っているものと別途発行しなければならないものの2通りがある。たとえば前者なら車検証や自賠責保険証明書、自動車納税証明書、後者なら印鑑証明や戸籍謄本、住民票などがあげられる。
それから豆知識として下取車を引き渡す時はガソリンの量は少なくていい。少なくても新車ディーラーや中古車販売店の営業マンが不満に思うことはないので、ギリギリまで使っておこう。